
情報参照元(最終確認日:2025年1月23日)
- 環境省「家庭系食品廃棄物及び食品ロス発生量の全国推計方法について」
https://www.env.go.jp/recycle/foodloss/pdf/suikeinituite.pdf - 環境省「家庭系食品ロスの発生状況の把握のためのごみ袋開袋調査手順書(令和6年10月版)」
https://www.env.go.jp/recycle/tejyunnsho.pdf
制作に至る経緯
引用:農林水産省, 食品ロスの現状を知る, https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/2010/spe1_01.html
食品ロスというと身近な社会問題ということもあり、直感的に何が問題になっているのかがわかりやすいと思います。
これまでも上記の画像のような”世界では、まだ食べられる食料が13億トンも廃棄に””そのうち日本では、約612万トン廃棄している”このような数字を目にしたことがありました。
なんとなく「へーそうなんだー」くらいに感じていたのですがシンプルな疑問として、こういう数字ってどうやって測ってるの??と思いました。
だって、僕が今日食べる予定の晩御飯を胃の中に入れようがゴミ箱に入れようが、上記のような数字には何の影響も与えていないはず。
ということは上記の数字は「推計」になるわけですが「食品ロスの数値」を推計するってどうやってやっているんだろう。
と、疑問に思ったので、その推計方法を自分なりに調べてインフォグラフィック化してみました(食品ロスは大きく「事業系食品ロス」と「家庭系食品ロス」があるのですが、あまりに複雑なので今回は家庭系にフォーカス)。
2019年に日経ビジネスが問題視していた

「食品ロス 推計方法」で検索するとこのような記事が見つかりました。環境省が公開しているデータを引用して家庭系食品ロスの推計方法をわかりやすく解説してくれています。
推計方法をざっくり言うと「家庭系収集ごみ量(粗大ごみを除く)×食品廃棄物の割合×食品ロスの割合」です。「食品廃棄物の割合」と「食品ロスの割合」は、全国の市区町村にアンケートを取って、推計している市区町村のデータから導きます。
これが曖昧ではないか?という指摘の記事です。
「家庭系食品ロス約291万トン」という数字は、類推に類推を重ねて算出されています。これは実態というよりも概念であり、本当の量はそれ以上かもしれないし、それ以下かもしれないという曖昧なものです。誰かが目撃したわけでもなければ、実際に調べたわけでもないのです。
実際に調べていないからには類推して求めざるを得ません。ただ、食品廃棄物の「過剰除去」を調べているのは、たった3市区町村のみ。あまりに数が少な過ぎます。この3市区町村から割り出した食品ロス量の割合「11.4%」は、残りの市区町村の食品廃棄物総計に掛けてよい比率なのでしょうか?
- まずそもそも食品ロスの定義が難しい(不可食部、可食部の境界)
- 測るのが難しい(ゴミ袋から取り出して計測)
- 計測数が少ない(どれだけのサンプルがあれば妥当か)
など、直感的にも想像に難くないよう実態の数字を知るのはかなり難しいことがわかりました。
環境省がゴミ袋開けて調査してた
インフォグラフィック内でも情報参照元として書いたこちらのデータ。環境省「家庭系食品ロスの発生状況の把握のためのごみ袋開袋調査手順書(令和6年10月版)https://www.env.go.jp/recycle/tejyunnsho.pdf」
令和6年10月に発表されているので、これを書いている時点(2025年1月)では、かなり最新のデータになるかと思います。
この資料では、推計に必要な要件「食品ロスの定義」「実際の食品ロスの計測」「サンプル数の妥当性(何袋計測すれば推定値が精密になるのか)」など、推計方法について体系的にまとめられています。
正直、びっくりしました。。。言ってしまえば当たり前かもしれませんが、ものすごく細かく定義づけをして、実際にゴミ袋を開けて調査しているようです。。。
運ばれてきたゴミ それを定義に沿って分類 分類してまとめてパシャリ 定義の例
資料内のサンプル数の妥当性について、このように書かれていました。
例えば、「各家庭から排出される家庭ごみ中の食品廃棄物の割合」がα市と同じように分布している場合を想定すると、ごみ袋 110 袋を調査すれば、「可燃ごみに占める食品廃棄物の割合」が精度±15%で推計されることが期待されます。
例えば調査の結果、食品廃棄物の割合が 30%となった場合、地域全体の値は、概ね 30%×(1-0.15)=26%から、30%×(1+0.15)=35%の間にある、ということになります。
また、β市と同じように分布している場合を想定すると、ごみ袋 65 袋を調査すれば、同様の推計精度が期待されます 。この精度は、国連環境計画(UNEP)が「信頼度が高い」と評価する水準にあります。
ある地域で、食品廃棄物の割合が30%のとなった場合、地域全体の値は26%~35%の間にある。これが信頼度が高い水準であると。
掛け算する割合のパーセンテージが1%変わるだけでも(膨大な社会全体のゴミ量を考えると)推計値には大きく響くかと思います。
「食品ロス量は年間○トン」と具体的な数字で書かれていると盲信してしまうので、今回調べてみて「とはいえ、まぁまぁアバウトな数字かもな〜」ぐらいのスタンスで数字と向き合うことになりそうです。