インフォグラフィック制作にあたって著作権について考慮していること

インフォグラフィック制作にあたって著作権について考慮していること

僕が作るものもそうですが、インフォグラフィックと呼ばれるものは基本的に「データ」を伝えるために作られることが多いです(データの種類は、アンケート結果、ランキング、人口、天気、山の標高などの事実とさまざま)。

もちろんデータの所有者からお仕事としてインフォグラフィックを制作する分に問題ないのですが、例えばネット記事として公開されているデータをインフォグラフィックに落とし込む際は著作権について考える必要があります。

僕もオリジナルのインフォグラフィックはネット記事から作ることがほとんどで、僕なりに著作権について考えてみたので、自分のメモとしてもまとめてみたいと思います。

まず、著作物とは

著作権法では、著作物を「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と定義しています

引用元:CRIC, 公益社団法人著作権情報センター「著作物って何?

著作物となるには「思想又は感情を創作的に表現」する必要があります。なので、単なるデータ(例:富士山の標高は3,776m)や万有引力の法則などの自然法則などは、著作物となりえません。

ネット記事で公開されているデータは著作物なのか

単なるデータは著作物となりえませんが、ネット記事で公開されているようなデータはどうか。

例えば、アンケートの著作権について「平成13年09月27日高松高等裁判所(事件番号:平成12(ネ)409)」の裁判例結果詳細の中でこのように書かれてるのを見つけました。

アンケ-トについても,その質問形式等に,思想・感情が包含され,かつ,他にない創作性が伴うものであれば,これが著作物に当たる場合もあり得ると考えられる。しかし,アンケートの結果そのものは,対象者の回答の集成としてのデータに過ぎず,これに対して一定の考え方のもとに創意工夫をもって整理,分析する等の表現がなされない限り,直ちに著作物に当たると認めることはできない。

そして,四国フォーラムの会場で発表された本件アンケートの結果の内容は,単に「死刑は必要」「死刑は不要」「わからない」との回答の人数及び割合を示したものにとどまる。したがって,仮に本件アンケートの質問形式,アンケート用紙等が著作物に当たると解する余地があるとしても,本件アンケートの結果自体はデータに過ぎず,創作性を備えた著作物と認めることはできない。

アンケート結果は単なるデータかのように思えてしまいますが「誰に」「どのような方法で」「どのような質問形式で」アンケートするか、という部分は調査する人の思想や感情が包含されていると言えます。そしてそこに他にはない創作性が伴うのであれば、著作物になりえると。

しかし「アンケート結果そのものは一定の考え方のもとに創意工夫をもって整理、分析する等の表現が表現がなされない限り,直ちに著作物に当たると認めることはできない。」とも書かれています。難しい・・・。

ネット記事で公開されているデータをインフォグラフィックの題材として使ってもいいのか

僕なりの今のところの結論は「単なるデータと言えそうなものだけピックアップしてインフォグラフィックを制作するのはOKなのでは」と考えています(専門家でもなんでもないので、あくまでも僕個人の結論)。

例えば「(架空の記事の例として)東京都に住んでいる100人に“今の内閣を支持するか”とアンケートしたところ45%が支持すると回答した。内閣支持率を上げるためには、現役世代の手取りを増やすような政策が必要だろう。」

架空の例として、このような文言が書かれた記事があったとして

  • インフォグラフィックで使う部分:東京都に住んでいる100人に“今の内閣を支持するか”とアンケートしたところ45%が支持すると回答(東京都、100人、45%が支持と回答の部分)
  • インフォグラフィックで使わない部分:「内閣支持率を上げるためには、現役世代の手取りを増やすような政策が必要だろう」という書き手の思想と言える部分

このように「データ」と「思想表現」を切り分ける必要があると考えています。

また、僕個人の判断では間違える可能性もあるため、参照元へ直接許諾を得ることも検討中(ですが、個人の制作物に対してインフォグラフィックごとに許諾するなんてしないでしょうから、許諾の必要のない範囲で個人の責任で作るのがベターと考えています…。)。

こういった著作物と言えるかどうかという話も大事ですが、適切な配慮をもってデータを参照させて頂きたいと思います。

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