グラフは、データを「正確に」「わかりやすく」伝えるための道具です。
でもその見せ方次第で、意図せず“誤解を招くグラフ”になってしまうことがあります。
たとえば、数値は正しいのに「成長してるように見える」「下がってるように見える」など、印象が全く変わってしまうケース。
こうしたグラフは、“詐欺グラフ”と呼ばれることもあります。
この記事では、データを扱うデザイナーや資料制作者が気をつけたい「誤解を生まないグラフデザイン」のコツを4つ紹介します。
棒グラフは「ゼロ始まり」が鉄則

まず最初のポイントは、棒グラフの“始まりの位置”です。
縦軸を途中(たとえば80や90)からスタートさせると、実際の差が小さくても見た目では大きな違いに見えてしまいます。
つまり「急成長しているように錯覚させる」リスクがあるんです。
棒グラフの基本は「ゼロから始める」。
これが守られていないと、数値の大小関係が正しく伝わりません。
もし細かい変化を強調したいときは、棒グラフではなく折れ線グラフなど“変化を見せるグラフ”を使うのがおすすめです。
円や面積グラフは「対応する面積比」にする

次に注意したいのが、図形の面積と数値の関係です。
例えば「A=100」「B=200」というデータを円で表すとき、Bの半径をAの2倍にすると、面積は4倍になってしまいます。
このように半径を2倍にするだけでは、面積が正確に比例しないんです。
正しい表現にするには「面積が数値に比例するように」調整すること。
つまり、半径は「√(数値の比)」で設定します。
たったこれだけで、見た目の印象と実際のデータが一致し、誤解を防ぐことができます。
ビジュアルで数量を表すときほど、見た目と数値の整合性を意識しましょう。
比較するグラフは「スケールをそろえる」

3つ目の注意点は、グラフ同士を比較するときのスケールです。
たとえば「Aの売上」と「Bの売上」を並べて見せるとき、縦軸の上限がそれぞれ違っていると、似た数値でもまったく違う印象になります。
Aのグラフが0〜100、Bが0〜400で描かれていたら、Aの変化が大きく見えたり、Bが過剰に安定して見えたりすることも。
比較する場合は、必ず「目盛りの単位」と「軸のスケール」を統一すること。
同じ基準で並べるだけで、データの信頼性がぐっと上がります。
折れ線グラフは「軸の設定」で印象が変わる
そして見落とされがちなのが、折れ線グラフの軸設定です。
折れ線グラフは、数値の変化を直感的に伝えやすい反面、「軸の取り方」で印象が大きく変わります。
同じデータでも、縦軸・横軸のスケール次第で「伸びて見える」「下がって見える」といった錯覚が生まれるんです。
縦軸スケール

縦軸の範囲を狭くすると、わずかな上昇でも急カーブに見えます。
一方で、範囲を広くすると変化が穏やかに見え、安定した印象を与えます。
つまり、縦軸をどう設定するかで「勢い」や「安定感」の印象が変わるということ。極端に狭めすぎると“盛ってるグラフ”になりやすいので注意が必要です。
横軸スケール

横軸の取り方も印象を左右します。
たとえば、直近5年だけを切り取ると「下がっているように見える」一方で、20年の推移を表示すると「長期的には上昇傾向」に見える場合があります。
同じデータでも、どの範囲を見せるかによって結論が変わることがあるんです。
そのため、グラフを作るときは「どんな文脈で」「どこを切り取るか」を意識しながら、軸設定を決めることが大切です。
グラフは“正確さ”と“誠実さ”の両立が大事

ここまで紹介した4つの注意点をまとめると、こうなります。
- 棒グラフはゼロ始まりにする
- 面積で量を表すときは面積比を合わせる
- 比較グラフはスケールをそろえる
- 折れ線グラフは軸設定で印象が変わることを意識する
どれも「数字を正確に伝える」ための基本的な考え方です。
でも実は、これらのポイントを守ることは単に“正確さ”のためだけではありません。
見る人との信頼関係を築くうえでの「誠実さ」でもあります。
グラフは「情報の翻訳者」。データをどう見せるかで、読み手の理解や判断が変わります。
だからこそ、見やすさと正確さのバランスを取ることが、デザイナーや資料制作者に求められるスキルなんです。
まとめ:見た目より「伝わり方」をデザインしよう
数字を強調したいときほど、グラフの見せ方には慎重になるべきです。
インパクトを出そうとしてスケールを狭めたり、都合のいい期間だけを切り取ったりすると、短期的には「わかりやすく」見えても、長期的には信頼を失います。
「正確に伝える」「誠実に伝える」この2つを両立させることこそ、グラフデザインの本質です。
同じデータでも、見せ方ひとつで印象は変わります。だからこそ、デザインの力で“正しく伝わるグラフ”を作っていきましょう。